個人民事再生
民事再生法という再建型の債務整理方法は主に企業向けでした。そのため個人版の民事再生手続きとして3つの特則を導入して、個人でも利用しやすく改正されたものが、個人再生の手続きです。
個人再生というのは、たとえば600万円の債務のある人が、収入に応じて支払える額として、120万円を3年間で返済するというような計画を立て、この計画(再生計画)を裁判所が認めることです。
その債務者がその後実際に、計画通り3年間できちんと120万円を返済できたならば、残りの480万円の債務が免除されるのです。この個人再生の手続きが整備されたことにより、債務整理・借金返済問題の解決の幅が広がりました。
任意整理や特定調停では処理しきれない場合は自己破産しかなかったのですが、その他の選択肢が出来た訳です。 但し、この個人再生の制度を利用するには、ある程度の条件を満たすことが必要です。
個人再生手続きの2種類
- 小規模個人再生
- 給与所得者等再生
の2種類があります。それぞれを詳しく見てみましょう。
小規模個人再生
小規模個人再生を利用できる人は、負債総額が5,000万円以下の個人で、将来、継続してまたは繰り返して収入を得る見込みがある人です。この場合の負債総額は基本的に無担保債務が5,000万円以下と考えてください。ですから住宅ローンが6,000万円あっても利用できます。
基準債権総額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 債務の全額 |
100万円~500万円未満 | 100万円以上 |
500万円~1500万円未満 | 債務総額の2割以上 |
1500万円~3000万円未満 | 300万円以上 |
3000万円~5000万円未満 | 債務総額の1割以上 |
給与所得者等再生
給与所得者等再生を利用できる人は、小規模個人再生を利用できる人の条件とおおよそ同じです。
主な違いは、将来の収入の見込みの点で、「給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者で、その額の変動の幅が小さいと見込まれるものであること」となっています。簡単に言ってしまえば、公務員やサラリーマンであること、ということです。
住宅ローン特則のあり・なし
住宅ローン特則とは、住宅ローンの支払方法の変更を認める制度のことをいいます。
民事再生の手続きをすると、債務を大幅に少なくすることができますが、住宅ローンは対象外です。
民事再生は、自己破産のように財産を没収されることなく債務の整理ができるので、住んでいる家も住宅ローンがそのまま残る代わりに没収されることはありません。
住宅ローンを抱え、多重債務で苦しむ債務者が民事再生を申し立てると、債務の支払いが停止されますが、その際に住宅ローン特則の申請をすると、住宅ローンが滞納されていても、抵当権の実行が行われることはありません。
住宅ローン特則は、「当初の契約通りに支払いを続け、それに加えて滞納分を分割で支払う。」や「住宅ローンの期限を延ばして、月々の返済額を少なくする。」や「それでも返済ができない場合は、民事再生の支払い期間中だけ一時的に住宅ローンの支払額を少なくする」などが可能となるので、毎月の支払金額を少なくすることも無理な話ではなくなります。
しかし、住宅ローン特則を使った場合、支払期限の延長期間は10年以内となり、70歳までに完済するという規定があります。
個人民事再生のメリット・デメリット

- 受任通知を発送してもらうことにより、各債権者からの請求が止まる
- 特定調停・任意整理では処理できない多額の借金に対応することが出来る
- 自己破産のように財産や国家資格を失うことなく、事業再建・生活建て直しをはかることができる
- マイホームを手放さなくてもよい

- 負債総額が5,000万円以下の個人で、将来、継続してまたは繰り返して収入を得る見込みがあるという条件をクリアしなければなりません。
- 手続きが複雑で、時間や手間がかかる
- 裁判所や専門家への費用は自己破産に比べると高い
